赤(あか)いもみじ、金色(きんいろ)のいちょう、澄(す)んだ空(そら)。秋(あき)の公園(こうえん)を歩(ある)いていたら、私(わたし)まで風景(ふうけい)の一部(いちぶ)になってしまいました。

秋の公園で赤いもみじを頭にのせ、赤いマフラーを巻いた女性。耳には小さなパールのスタッドピアス。

秋風(あきかぜ)のいたずら

休日(きゅうじつ)の午後(ごご)、私(わたし)は小(ちい)さな手帳(てちょう)を持(も)って、公園(こうえん)へ出(で)かけました。「今日(きょう)こそ、秋(あき)らしい言葉(ことば)を一(ひと)つ書(か)こう」と思(おも)ったのです。

見上(みあ)げると、もみじは夕焼(ゆうや)けを集(あつ)めたように赤(あか)く色(いろ)づいていました。いちょうの下(した)には、金色(きんいろ)のじゅうたんが広(ひろ)がっています。木漏れ日(こもれび)が落(お)ち葉(ば)の上(うえ)で揺(ゆ)れ、小川(おがわ)には青(あお)い空(そら)と赤(あか)い枝(えだ)が映(うつ)っていました。

足元(あしもと)では、かさっ、かさっ。落(お)ち葉(ば)が、歩(ある)くたびに返事(へんじ)をしてくれます。私(わたし)はうれしくなって、ゆっくり深呼吸(しんこきゅう)をしました。

そのとき、ひゅうっと風(かぜ)が吹(ふ)きました。

赤(あか)い葉(は)が一枚(いちまい)、くるくる回(まわ)りながら頭(あたま)の上(うえ)に着地(ちゃくち)。続(つづ)いて、黄色(きいろ)い葉(は)が赤(あか)いマフラーにぴたり。私(わたし)は気(き)づかずに、手帳(てちょう)を開(ひら)こうとしました。

すると、近(ちか)くにいた男(おとこ)の子(こ)が、私(わたし)をじっと見(み)て言(い)いました。

「お姉(ねえ)さん、もみじの木(き)ですか?」

私(わたし)は頭(あたま)にそっと手(て)をやりました。指先(ゆびさき)に触(ふ)れたのは、小(ちい)さな葉(は)の王冠(おうかん)です。思(おも)わず笑(わら)って、こう答(こた)えました。

「はい。でも、この木(き)は歩(ある)けますよ」

「すごい! じゃあ、散歩(さんぽ)する木(き)だ!」

私(わたし)が得意(とくい)そうに三歩(さんぽ)歩(ある)くと、また風(かぜ)が吹(ふ)きました。頭(あたま)の葉(は)が、ひらり。

「あっ、もう散(ち)っちゃった!」

「早(はや)すぎます。まだ三歩(さんぽ)しか歩(ある)いていません!」

二人(ふたり)で笑(わら)うと、足元(あしもと)の落(お)ち葉(ば)がさわさわと踊(おど)りました。まるで、秋(あき)が拍手(はくしゅ)をしているようでした。

帰(かえ)り道(みち)、私(わたし)は拾(ひろ)った赤(あか)い葉(は)を手帳(てちょう)にはさみました。秋(あき)らしい言葉(ことば)は、もう見(み)つかっています。

「秋(あき)は、眺(なが)めるだけの季節(きせつ)ではない。ときどき、こちらにいたずらをしてくる。」

ことばのメモ|閱讀小筆記

  • 紅葉(こうよう):葉子在秋天變紅、變黃的現象,也指染上秋色的樹葉。もみじ在這個故事裡指楓樹或楓葉。

  • 色(いろ)づく:染上顏色、開始變色。例:葉(は)が赤(あか)く色(いろ)づく。

  • 木漏れ日(こもれび):穿過樹葉間隙灑下的陽光,整個詞讀作「こもれび」。

  • ひらり:輕輕飄動、飄落的樣子。例:葉(は)がひらりと落(お)ちる。

  • いたずら:惡作劇。〜しか〜ない表示「只……」;「三歩(さんぽ)しか歩(ある)いていません」就是「只走了三步」。

※このお話(はなし)は創作(そうさく)です。/本篇為原創虛構故事。